セクハラは意外と気づけない話③
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makkuronekosuke.hatenablog.com
前回はおじさん社員からの電話の回数が徐々に増えてきたところまで書きました。
ここからさらにおじさんの行動は斜め上の方向へエスカレートしていきます。
おじさん、ねこを拾ってくる。
突然ですが、私の家には当時2匹の猫がおりました(現在は3匹です)
たまたま縁あって私の家に来た元ノラの子たちばかりですが、 うちの子たちに共通することは、私が望んで迎え入れ、責任を持って育て上げると覚悟したうえで引き取った子たちばかりである、ということです。
1匹目の子が同じ会社の同僚の子から引き取ったこともあり、私の家にねこがおり、たまにねこ用のリードをつけて会社の中で運動不足解消のお散歩大会を開く(今は大きくなって落ち着いてきたのでやっていません)くらい飼い猫のことを溺愛しているということは、私が誰に話すともなく会社の中では有名な話となっていました(私の会社は、社内でお世話している室内ねこたちがいるような環境です)
そんな噂を件のおじさんも知っており、事件を引き起こすきっかけになりました。
ある日突然、おじさんが仕事先から捨て猫、しかもまだ目が開いたか開いてないかくらいの赤ちゃんねこを拾ってきてしまったのです。
ねこを拾ってくることに関して、私からとやかく言うつもりはありません。
しかし、おじさんの行動は非常にアクロバティックなものでした。
「仕事先にいたねこが死にそうで可哀想だったから、君に面倒見てもらおうと思って
つれてきちゃった!」
これを聞いた瞬間、拾われてきたねこをひと目見ようと集まってきていた同僚たちの雑談がピタッと止まった事は忘れられません。
私も驚きで固まっていました。
束の間のフリーズから早く復帰した先輩社員が「**さんが世話するために連れてきたのではないのですか」と聞いてくださったのですが、それに対するおじさん社員の返答は
「俺の家族は猫アレルギーがあるから飼えないんだけど、どうしても見捨てられなくて連れてきちゃった」
というものでした。
こう人がいるから、動物保護に嫌悪感を示す人が増えるのだと、深く理解した瞬間した。
なにを言っているんだと思いましたし、私の家にはすでに2匹の猫がいる状態です。
もし、その連れられてきた猫に病気があり、さらにそれが伝染病であったら?
我が家でのほほんと暮らしている猫たちにも、病気が感染してしまう可能性があります。
加えて当時、2匹いたうちの片割れは、まだ離乳食を始めたばかりの幼猫でしたので、これ以上ねこを増やすことは考えられなかったのです。
こうした理由をあげながらねこの引き取りを固辞していたのですが、おじさん社員はまったく聞き入れてくれないどころか
*君の家に直接ねこをつれていく
*君が面倒みなくてもいいように、自分が毎日通って世話をする
など、ズレたことばかりいって、まったく話になりませんでした。
とにかくこの話の中で、私にとっていちばん恐ろしかったのは、猫が増えて私の生活が苦しくなることよりも、ねこを届けに直接おじさんが私の家に来るという発言の方でした(私の家は社員寮なので、住所は周知されています)
そうして色々なことを諦めた私は、会社からまっすぐ設備の整った大きな動物病院へ向かい、ねこの検査をして貰ってただの栄養失調で親猫に捨てられたのだということを教えて貰い、赤ちゃんねこの世話の仕方、先住猫との住み分けの相談をしてから帰宅することになりました。
その後、私の生活は2〜3時間おきに子猫にミルクを与え、トイレの世話をし、睡眠時間を削って疲労を蓄積するような生活になりました。
ただ、チビねこの世話は、実を言うとそれほど苦にはなりませんでした。
私の主な疲労とストレスの原因はねこを預かってからほぼ毎日のペースでかかってくるようになったおじさんからの長電話の方でした。
最初の頃には10分程度だったおじさんからの電話は、この頃には短くとも30分、長いと2時間を越えるようになっていました。
ねこの容態確認から始まる電話は、途中から仕事の話になり、そこから日頃のグチの話になり、こちらから切ろうとするとまた仕事の話に戻り、なかなか切らせてもらえない、負のループに陥っていたのです。
ここまでなっても私はまだ、この異常事態から抜け出す方法がわからずにいました。
これは、私に「相談する相手」がいなかったことも大きかったように思います。
当時わたしのいた部署は、私と、私の上司の2人だけの部署でした。
私の上司は30代の男性社員でしたので、こうしたトラブルはとても相談しづらく、普段からの日常会話もそこまで多い間柄ではなく、女性関係の噂もよく聞く方だったので、こちらが自意識過剰だなどと言われたらどうしようと、被害妄想を繰り広げていたせいも多分にあります。
そんな日々が2週間ほど続いていたのですが、結果から申し上げますと、子猫は天へと旅立っていってしまいました。
先天性の、栄養がうまく吸収できない病気であったことが原因でした。
たった2週間とはいえ、一緒に過ごした間柄です。
病院で息を引き取った時は、しばらく話ができないくらい大泣きをしました。
唯一の救いだったのは、チビの最後の日、たまたま恋人が遊びにきており、病院に連れて行くところから、亡骸を埋めるところまで、ずっと一緒にいてくれたことです。
加えて、その日は奇跡的におじさんからの着信が一切ありませんでした。
次の日、会社でおじさん社員にも一応ねこのことを報告しました。
面倒をみていたのは完全に私であり、むしろねこをダシにして毎日のように電話をしてきていた相手ではありますが、もともと拾ってきた張本人ですし、伝えないわけにも行きません。
おじさん社員は私の話を聞いて、病気の猫とは知らなかったとはいえ、辛い役回りをさせたと丁寧に謝ってくださったのですが、そのあとに続いた言葉に、とてつもない衝撃を受けました。
「今度は病気のない、元気なねこを拾ってくるな」
目の前がまっくらになる思いでした。
ただし、捨て猫なんてそうそういるものではありません。
この時は、タチの悪い冗談だろうと思って聞き流していました。